明石・魚の棚をもっと知りたい、楽しく歩いてみたい……情報紙
海から食卓へ、おいしい魚が届くまで
明石の魚はおいしい。そのおいしい魚はいったいどんな風にして私たちの食卓にやってきたのか、漁ってどんな風に行われているのか、見てみた〜い!ということで、今回は漁師さんの協力のもと漁船に乗り込み、普段見ることのできない漁業の現場を、取材させていただきました!
1本釣り漁

午後2〜4時出航
 1本釣り漁の出航は午前2〜4時が基本。「今日は○○を釣る」と狙いを定めて、それに応じた仕掛けをいくつか用意して出航する。”まどろ“(=日暮れ)、”あさげ“(=夜明け)と呼ばれる、魚がえさを食べる時間帯にしか釣れないため、夜明けが勝負時だ。アジ、サバ、ツバスのように昼間活動する習性の魚を狙う場合は昼から夜にかけて漁を行う場合もある。
まさに自然と向き合う仕事だね〜

魚が活動する時間帯の2時間ほどが勝負!

漁場はすぐそば
漁場に到着

 魚のいる場所に船が流れて行くように操りながら、生きたえびを潮の流れを読みながら投入し、7本の針がついた約25メートルの糸を手でたぐって釣り上げる。5〜20分ごとに糸を引き上げ、繰り返す。2回目で30センチほどのスズキが釣れた!が、その後は当たりがないので漁場を移動する。その日の様子を見ながら場所を変えてみたり仕掛けを変えてみたりして、魚を獲っていくそうだ。

手から伝わってくる感覚と勘が頼り。
やった!まずは1尾ゲット!

場所と仕掛けを変えながら何度もチャレンジ
船と海に浮いたウキの間の糸にぶら下がった数本の針に、餌のえびを付ける。潮の流れを利用して目的のポイントに仕掛けを流して行く。繰り返しこの作業を行い、ここでも30センチほどのスズキを2尾釣り上げた。また場所を変えて、疑似餌を使った「かけ流し」の漁法で好調に3尾釣り上げるが、その後はピタリと止まってしまった。1本釣りは底引き網漁よりもさらに博打性が強い。場所、潮の流れ、時間帯、さらに満月か新月かといった自然条件に大きく左右される。経験と勘、運も味方にして初めて結果が出る難しい仕事だ。

同じ魚種ばっかり獲れ過ぎたら値が下がる。
だから日によっていろんな魚を狙うんや。

値段が安いと消費者として
はうれしいけど、漁師さんも大変なんやね。
 

午前11時帰港
 昼市に間に合うように港に帰ってくる。釣った魚種に応じて、プール(活けす)で活かしておく場合もあるし、氷締め・鍵締め・エラ締めにしてせりにかける場合もある。


1本釣りで獲れる魚種…
ツバス、スズキ、ヒラアジ、マルアジ、
タチウオ、サワラなど。

せりまでもうひと仕事、
ここからは妻の出番。
 まだ薄暗い午前3時、船が港に着いてもまだまだ仕事は続く。船が着く時間に合わせて港で待ちかねているのは漁師の妻だ。今では携帯電話が普及し、到着時間を知らせられるようになったが、以前は前もって約束した時間まで港で待っていなくてはならず、大変だったそうだ。
 魚を水揚げした後、港での作業は妻の仕事(夫は次の漁に備えて家に帰り、睡眠をとる)。船上で種類別に分類された魚を、さらに大きさで選り分けてカゴに入れていく。そのカゴを明石浦漁港に設置してある水槽に沈め、せりの時間まで活かしておく。水槽に入ってていねいに魚を選り分けていく作業は大変な仕事だが、せりで少しでも良い値で売るためには欠かせない。このようにして、漁師の仕事は夫婦(または一家の男女)の共同作業によって成り立っている。命懸けで船を出す夫、そしてそれを支える妻、それぞれの苦労があるのだ。

午前11時半
明石浦漁協のせりがスタート!

 せりは午前11時半にスタート。プール(活けす)から揚げたばかりの魚が、せり台の上を滑るように通り過ぎていきます。階段状になった大きな台に何十人もの買い付け人が立ち、状態をひと目で判断しながら、せり人が声で発する符丁(独自の値段表現)に応じて、手の合図で値段を交渉したり、意思表示を行っています。隣には売買後の魚を留め置く水槽があり、興奮状態の魚を鎮め、未消化物を吐き出させて味をよくする「活け越し」という工夫も場合によって行われています。※明石浦漁協は関係者以外立ち入り禁止です。

次から次へとハイスピードで売買される様子は、迫力満点!

正午過ぎ
せり落とされた魚が、
魚の棚商店街に跳ねる!

 漁協のせり場でも、魚が入ったトロ箱を持って超特急で走ってゆく魚屋さんの姿は迫力いっぱい!「少しでも新鮮なうちにお客さんに届けよう」という気迫に満ちている。買い付けられた魚はそのまま活けす付きのトラックで運ばれるか、鮮度をより長く保つために
”神経抜き“という処置をしたり適切に締めたりした後、運ばれる。
 明石浦漁協から魚の棚商店街までは車ならすぐの距離。だから正午過ぎには鮮魚店の店頭で昼網の魚が並ぶ。逃げ出すたこや跳ねる魚、魚の棚ならではの風景は、いち早く消費者に届けられる明石独自の仕組みがあるからこそなのだ。

そして家庭の食卓へ…
 豊かな明石海峡に育まれた海の幸は、こんな風にして皆さんの家庭の食卓に並びます。漁師さんの苦労を知るとともに、命をいただくことへの感謝も忘れずに!
 それぞれの旬を逃さず、ありがとうの気持ちでおいしく味わいましょう。

漁は命がけ!明石海峡はキケンな“特定水域”
 明石海峡は好漁場であると同時に、本船(タンカーやフェリー)の航路でもある。そのため昔から衝突事故があり、海底には過去に沈んだ船も多いため、さらに危険な海域として”特定水域“に指定されている。1人で漁を出していると、真っ暗な中で作業に夢中になってしまう。ふと顔を上げると目の前に大きな船が近づいていた、ということも何度もあるそう。漁師の仕事は常に危険と隣り合わせだ。
知って欲しい、漁師の思い
 今年は8月に全国の漁協で一斉休漁が行われたが、これには漁師さんの「苦しさを理解してほしい」という思いが込められていた。高いガソリン代を使って沖へ出ても、自然相手の漁は博打のようなもので、時には赤字ということも。「明石では昨年の海苔養殖の重油流出被害に原油高が重なった。今年も不漁が続けば廃業しかない」との声もある。それでも日本一の明石の魚を次の世代にも提供し続けるため、漁師さんたちは今日も立ち向かう。
 そんな状況のなか、世の中で産地偽装問題が増えているのはとても残念なこと。「命がけで獲ってくる魚、明石ブランドは正しく表示してほしい!」。
 
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