明石・魚の棚をもっと知りたい、楽しく歩いてみたい……情報紙

 明石で「上ちくわ」「明石ちくわ」などと呼ばれているちくわ、皆さんはご存知でしょうか?
 見た目は少し大きめのちくわで、魚の棚の天ぷら(練りもの)店で一般的な練り物と一緒に並んで売られているのですが、独特の匂いと味が特徴です。明石で生まれ育った人にとっては”これぞちくわ“。でも明石以外の土地にはない商品で、他所から来た人にはあまり知られていない。そんな「上ちくわ」の製造現場にお邪魔しました。

 

A






@ フカの身をミンチにして、ハモ、タラなど他のすり身を加え、調味料で味付けをする。一般的なちくわと違ってでんぷんや浮粉などのつなぎを入れないので、噛みごたえがあって甘みより塩味が勝ったものになる。
 
B棒を芯にして筒状に型で抜き、ローラーで転がすようにして形を整える。鉄の串で刺して穴をあけ、空気を抜く(焼いたときに膨張するのを防ぐ)。横に筋が入れてあるのは、手で棒にすり身を巻いていたころの名残り。


   
 
Cそのままコンベヤーにのせてガス火で焼き上げる。熟練した人の手ですばやく、くるくる回したり順序を替えたりしながら、均等にこんがりと焼き上げる。蒸す工程がないので、火が通るようしっかりときつね色になるまで焼く。

  
D焼けたら芯にしている棒を抜き、網の上で冷ます。
最後にビニール包装して完成。


上ちくわの特徴
  フカ(サメ)を主としてハモ、タラなどを加えて作る。黄みがかった独特の色と、固めの歯ごたえ、酒のあてにちょうど良い塩味と少しくせのあるフカの風味が特徴。でんぷんや浮粉などを加えて作られる一般的なちくわと違い、魚らしい味わいは、食べ慣れると他のものでは物足りなくなるほど。
なぜ明石でフカ(サメ)?
 明石浦漁協の山嵜清張さんに聞いたところ「昭和30年代までは、漁の少ない時期に漁師がかまぼこ屋に出稼ぎに行くことが多かったんです。今と違って、昔の練りものと言ったら魚の中でも安価なフカなどを使うのが普通。明石以外の土地でその技術を覚えた人が、地元で作り始めたんでしょう。他の地域でも作られていたけれども、今もその味が残っているのが明石だけ、ということでしょうね」とのこと。山嵜さんを含め、魚の棚周辺で生まれ育った40歳代以上の人たちにとって、製造所から漂うフカのアンモニア臭は強烈な印象だったようです。
上ちくわの食べ方
 匂いや味が特徴的で塩が効いているので「そのまま何もつけずに食べるのが一番」という意見が多いようです。「仲井商店」の濱田さんによると、細く切って巻き寿司の具にする家も多かったそう。「ちくわだけじやなく、いかなごのふるせをつけ焼きにして、ほかの具と一緒に巻いた太巻きが懐かしい」と語ってくれました。

昭和50年代ごろまでは魚の棚近辺に5軒ほどあった「上ちくわ」製造所も、今では「仲井商店」と魚の棚の「ハセ蒲鉾」の2軒のみになりました。今回取材させてもらったのは、魚の棚商店街の少し南にある「仲井商店」。三代目の濱田保子さん、四代目の智子さんを中心に女性ばかりで作業しています。機械を使ってはいるものの、均等に焼き上げるための素早い動きは職人技。郷土の味をこれからも作り続けてほしいですね!

明石・魚の棚をもっと知りたい、楽しく歩いてみたい……情報紙
<<< バックナンバー



Copyright (C) 2011 All rights reserved by uonotana-syoutengai