商店街が、食育の現場になる。
大学講師の仕事だけでなく明石の食に関わる地域活動や、昨年7月に食育基本法が施行されてからは食育指導にも精力的に取り組んでいる野口孝則さん。
「大人になって生活習慣病を警告されてから、嗜好を変えるのは難しいし、それでは遅い。子どものうちからきっちりと食について学び、自分の食べ物を選べるように育てよう、とできたのが食育基本法です」。食卓に並んだ食事から、その栄養バランスを理解したり、食材の元の姿や、生産者の苦労を想像できるかどうか。そのためには、たとえば子どもたちが田畑や漁港に出かけて行って生産の現場を見る、といった経験が必要だ。「また、地元に商店街があれば、そこでもさまざまなことが学べます。魚屋、八百屋、加工品を売る店もある。子どもたちも興味を持って見られるし、お店の人から旬の話も聞ける。そんな商店街ならではの良さが残っているのが魚の棚だと思うんです」
子どもたちにも“伝わる”商店街へ。
実際、子どもたちに商店街の面白さを知ってもらうことは、魚の棚商店街の将来にとっても重要な活動に違いない。今後、食育の現場として商店街が期待されるものは何だろうか。「まず、子どもたちにもわかりやすい表示を心がけてほしいですね。値札の文字は読みやすく、魚なら元はどんな形、どんな大きさの魚なのか、どの部分なのかわかるように図を見せるとか」。鮮度、スピード勝負の商売のさなか、難しいことではある。しかし表示が見にくい、わかりにくいといった点はこれまでに、買い物に訪れる大人からも指摘されてきた課題でもあるのだ。
食のプロに学校へ来てほしい。
「また、商店の人たちに食のプロとして学校へ来ていただき、子どもたちに話をしてもらうというような取り組みもぜひ進めていきたいですね。そういった依頼が教育現場から出てきたとき、対応できる態勢や窓口を整えてもらえないでしょうか。そういう姿勢をぜひ示してほしいと思います」。
対面販売の中で自然に受け継がれてきた郷土の味や調理法は、生きた食文化である。商売を通して食の豊かさ、楽しさを伝えることができる魚の棚商店街と、野口さんのような食と教育の専門家。2つが連携することで生まれる双方の未来像を、これから探っていきたい。 |